記事一覧

オメガはいつも欲しいものを手に入れる。しかし、ほかのロットはどこにあったのか?

先日の最も興味深いロットのひとつは、アメリカ文学の傑作『見えない人間(原題:Invisible Man)』を遺した偉大な作家、ラルフ・エリソン(Ralph Ellison)が生前所有していたスピードマスターだった。ジャックがこの時計を紹介する素敵な記事を担当したが、この時計は最終的に66万7800ドル(約7610万円)で落札され、そのスピードマスターのリファレンス(145.012-67 SP)の最高落札額の記録を更新した。オークション終了後、オメガは同社がこの時計の購入者であると公表し、ジョン・F・ケネディ大統領のウルトラシン、エルビス・プレスリーのホワイトゴールド製ドレスウォッチ、そしてリチャード・ニクソン大統領のスピードマスターなど、これまでのオークションで獲得した時計と一緒にスイスのビールにある自社が擁するミュージアムに展示する予定だと述べた。

これは明らかにすばらしい時計であり、すばらしいストーリーを持っているが、先週行われたすべてのオークションで注目すべき唯一のオメガでもあった。私がジュネーブ滞在中にフィリップスでオメガとしては異例の記録更新となった340万ドル超(約3億8750万円)で落札されたスピードマスター Ref.2915-1が、オメガとオークション界に関する最新のニュースだったことを考えるとこれは奇妙なことだと思う。そのオークションのあと、価値のあるヴィンテージのスピードマスター(そして潜在的なほかのオメガも)が正当な評価をオークションでようやく得られるようになったかどうかについて活発な議論が行われた。

最もシンプルな答えはオークションにオメガのロットを追加する時間がなかったということだ。ジュネーブでハンマーが落ちる頃にはカタログはとっくに完成していただろうが、それでも残念な気持ちになった。フィリップス、クリスティーズ、サザビーズに出品された何百、何千というロットのなかでヴィンテージオメガは10本にも満たなかったのだから。

スピードマスターのヴィンテージ市場を検証するには春のオークションシーズンまで待たなければなるまい。

【関連記事】:https://www.debwan.com/finglin711