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自分の持っている時計のムーブメントは手作業で仕上げられているか?

現代の時計製造では最初から最後まで手作業で面取りを行うことはあまりないのではないか、とお考えの読者も多いと思うが、そのとおりである。ひとつには時計学校では面取りは教えられていないからだ。教育プログラムは一般的に時計製造ではなく時計修理に重点が置かれており、ましてや手仕上げは教えられていない。つまり実際に手作業で面取りをする方法を知る職人は、面取りの職人を育成するメーカーの工房で学んでいるのだ。1本のブリッジを面取りするのに10時間以上かかることもあり、高度な訓練と技術が必要であることを考えると面取りを目にする機会が少ない理由がわかってくる。

 では、ムーブメントの面取りが実際に手作業で行われているかどうかを見分けるにはどうすればよいのだろうか? これが難しいところで、見分けるのは本当に難しい。我々は高級時計ブランドの製品には必ず手作業による仕上げが施されていると思いがちだが、本当にそうなのだろうか? そのラグジュアリーウォッチが本当に隅から隅まで手作業で仕上げられているかどうかを知りたいのであれば、経済的合理性から考えてみてほしい。

 もしあなたがラグジュアリーブランド関係者で、年間6~7万本の時計を製造しているとしたら、すべての時計のすべてのブリッジに手で面取りをすることは圧倒的に不利だ。そのような大量生産に対応できるだけのノウハウをもった人がいないことと、製造工程に何十時間もの時間と多くの不確実性が加わることが理由だ。手作業による仕上げが最も多く見られるのは、高い名声を誇る古典的ムーブメントや生産量が極めて少ないハイコンプリケーションなどの“話題作”である。

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